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「DND甦れ!食と健康と地球環境 第74回」での疑問点

相変わらず気が進まないが、比嘉照夫氏が「Digital New Deal甦れ!食と健康と地球環境 第74回 福島における2013年度のEMによる放射能対策の成果(1)」でEMでの放射線対策について述べておられるので、その問題点について指摘しておきたい。

その中で、とある牧場でEMによる処理を行なった牛のスラリー(糞尿)を牧草に施用したところ、明確に土壌中の放射性セシウムが減少し、牧草への移行係数も低下したと書かれている。そのデータを見てみると、確かに農地の放射性セシウム量が減っている。また、対象区(化成肥料施用)の放射性セシウムが増えているのは比嘉氏も指摘しているとおり、周辺環境中の水が集まってきていて、それに放射性セシウムが含まれているとすればありうる話である。これだけ見れば、EM処理したスラリーに放射性セシウムを減少させる効果があるように見える。

しかし、この試験には試験設計及び結果の解釈にいくつか問題点がある。まず一つ目はスタート時の土壌中放射性セシウム量が大きく違うことである。これでは本当に平等な条件かどうかわからない。こういった試験研究の常として、比較するために変更する部分以外の条件は出来るだけそろえるべきである。反復を多くとるなどして条件をそろえなければ正確なデータとはいえない。なので、対象区は場所的に水が集まりやすい場所を選んだのではないかといわれても仕方あるまい。ただ、これはまったく現場を見ていない推測による言いがかりに近いものではある。

では、他には問題点はないのかというと、もっと大きなはっきりした問題点がある。スラリーには、高い割合でカリウムが含まれている。また、その肥効率も非常に高く、草地ではおよそ80%もの高率である。つまり、試験区(EM処理)では放射性セシウムの移行係数が低くなっているというデータが出ているが、セシウムの植物による吸収は土壌中カリウムの量と逆の相関があるため、これはカリウムの効果である可能性が高い。もし、EM処理の効果であるというのなら、対象は化成肥料ではなくEM処理をしていない家畜糞尿スラリーか、どうしても化成を使うのであればカリウム量を測定した上で塩化カリウムなどを使用してカリウム量を試験区間で同じにしなければならない。また、窒素量によって植物体の生育量も変わり、生体重の違いや生育速度の違いがセシウムの吸収に与えている影響も無視できない。こういった条件の統一にあまりに無頓着な試験であるといわざるを得ない。農学部の名誉教授がかかわっているにしては、あまりにお粗末だろう。

また、大量のカリウムが施用された効果により、土壌粒子に吸着されていたセシウムが置換されて(カリウムが土壌に吸着されることによりセシウムが引き剥がされる)土壌溶液中に溶け出し、試験地の土壌から環境中に流出した可能性もある。

ここで指摘した不備は、試験結果そのものを完全に否定してしまうものではない。しかし、通常の試験研究からすれば条件設定があまりに甘いため、このデータから言えることは「EMの効果によって放射性セシウムの吸収を低下させ、土壌中の放射性セシウムの量を減らしたということは否定はできない」ということであって、EMに効果があったと結論付けるのは誤りである。


最後に見直して気づいたが、福島県でのEMの試験に言及したエントリー とほとんど同じようなことを指摘している。ベラルーシでの試験のエントリーもそうだ。いつまでこんな事を続けないといけないのか・・・。

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