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ベラルーシでのEMによる放射性セシウムの移行抑制試験について

以前のエントリーで福島県における各種資材によるセシウムの植物への移行抑制試験について取り上げた。その際、比嘉先生が他の資材での抑制効果との比較について考察せず、EMオーガアグリシステムの堆肥が対象区に対してセシウムの植物への以降量が少なかったことをもってEM資材は効果ありと判断されたことについて不備があることを指摘させていただいた。このような弱小ブログをご覧になっていなかったと思われるため、それに対する明確な反論はいまだに目にしないが、その代わりに次に挙げるような文章をいくつか発表しておられるようだ。

さて、今回比嘉先生が「甦れ!食と健康と地球環境」で取り上げた試験はベラルーシ共和国国立放射線生物学研究所アレクサンダー・ニキティン氏によるチェルノブイリ汚染土壌等を用いたEM資材による麦類、レタスへの放射性セシウム移行抑制試験である。内容については、そこに書いてあることは多少簡略化されていると思うが、とりあえずここにすべての情報が明らかにされていると仮定してこの試験研究から何が見えてくるのか自分なりに読み解いてみたい。

さて、試験方法の部分であるが、ポット試験ではどれだけの反復をとったのか明らかにされていない。まさか1ポットずつしかやっていないということはないだろうが、反復が少なければばらつきの程度がわからないので、減ったのは事実だと思うが、しかしこの結果ではそうですかその可能性もありますねとしか言いようがない。また、EM1とEMぼかしの成分が明らかにされていない。もし、これらの資材がカリウムを多く含んでいたのであればその影響がなかったとはいえまい。是非、そのあたりを明らかにしていただきたい。

レタスのほ場試験については、この図を見る限りにおいては対象区のみ1反復取っているが、試験区は反復無しとなっている。このようなほ場試験の場合、ほ場の位置や向きなどの影響を排除するため、位置関係を考慮して反復を取るのが普通である。また、比嘉先生は以前他の試験でEMを施用した区より対象区のほうがセシウム低減効果が高かった結果が出たときに「対象区に波動の影響が出たものと思われる」と仰ったが、それならば試験区と対象区を影響が出ないくらい離すべきであるし、このほ場図からすれば対象区にも何らかの影響が出ていなければおかしい。そこのところ、どう説明するおつもりだろうか。

さて、放射性セシウムの植物体への移行が減った原因について、追加実験で水溶性セシウム、交換態セシウムの量が減り、有機物結合部セシウム及び粘度鉱物結合部セシウムの量が増えたと主張されている。しかし、この部分の意味がよくわからない。有機物結合部セシウムとは有機物に取り込まれたセシウムのことだろうか。それともセシウムイオンが土壌中の腐植物質と結合したものという意味だろうか。また、粘土鉱物結合部セシウムについても意味がよくわからない。粘度鉱物は陽イオンを吸着する力が強いが、決して引き剥がせないわけではない。例えば、セシウムが吸着されていたとしても、他の塩基類(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)が土壌溶液中に存在すれば容易に置換される。つまり、置換性=交換態であると自分は理解していて、粘土鉱物結合部と交換態のセシウムのどこが違うのかよくわからない。また、有機物結合部セシウムが有機物として取り込まれたものでなく、腐植酸の陰電荷に結合しているだけのものとすればこれも交換態と同じ意味になってしまう。そのあたりどう違うのか説明してもらいたいものである。

もし、粘土鉱物結合部及び有機物結合部が私の考えているようなものであれば、植物は根から根酸という有機酸を出し、その水素イオンでそれらに結合している陽イオンを交換して吸収するものなのだが、それとはメカニズムが違うのだろうか。

通常、農業分野で土壌分析を行なう場合、交換性塩基類の抽出には酢酸アンモニウム溶液を用いる。詳細は省くが、酢酸アンモニウム溶液のアンモニウムイオン(陽イオン)で土壌粒子や腐植物質に吸着されている塩基類(陽イオン)を置換し、溶液中に溶出させて分析機器に掛け、測定する。なので、このようにして測定された塩基類を交換性あるいは置換性塩基類と呼ぶのである。

それでは、次に最後の文章の部分を引用してみよう。

-引用開始-
本年、福島県農林水産部からEM発酵堆肥により土壌中の放射性セシウムのコマツナへの移行が抑制されたという試験結果が報告されたが、移行抑制メカニズムとしてはEM発酵堆肥に含まれる可溶性カリウムの効果であると考察されていた。しかしながら、今回紹介したベラルーシでの研究成果では、EMの効果は可溶性カリウムによるものでなく、EMが放射性セシウムを植物の根が吸収しにくい形に変えていることによるものであることが明らかにされた。
-引用終了-

明らかにされた、と仰っているが、この試験内容では少なくとも「その可能性があることがわかった」程度であると思う。福島県の試験では、EM以外の試験区の結果から、カリウムの施用による抑制効果であると考えなければ説明が付かないと思うが、そのあたりはどう思われているのだろうか。カリウムの効果でないと仰るのなら、皆が納得する考察を披瀝していただきたいものである。また、今回の試験における疑問点もいくつか挙げさせていただいたが、それらについてはどこかで説明していただけることを期待している。念のため、以下にもう一度疑問点を挙げさせていただき、以前のエントリーと合わせて反論・説明をお待ちしたいと思う。

1 ポット試験ではどの程度の反復を採ったのか
2 EM1、EMぼかしの肥料成分はどのようなものか
3 それに合わせ、対象区と試験区で肥料成分量は同じにしてあるのか
4 レタスのほ場試験での反復は採っていないのか
5 レタスのほ場試験で対象区に「波動」の影響は出なかったのはなぜか
6 粘土鉱物結合部及び有機物結合部と交換態の違いは何か

私は研究職を離れて長いため、土壌肥料に関する知識のアップデートが遅れている可能性は否定しない。それでも、土壌肥料の試験研究を行なってきた経験を生かし、十数年ずっと最前線で戦ってきた自負がある。是非とも農学部名誉教授としての経験、知識によって私の疑問を払拭していただけることを比嘉先生には期待している。

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