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水田で野菜栽培をすること -輪作はなぜ必要か-

平成24年度の耕地面積は、水田が2,469,000haで畑地が普通畑、牧草地、樹園地をあわせて2,080,000haと農水省の統計では発表されている。つまり、国内の耕作地は54.3%を水田が占めているわけである。効率的食糧生産のため、瀬戸内地方や西南暖地では冬でも雪に埋もれず、霜が降りても凍結しない(しても表層まで)水田を有効活用して冬季に畑作(水稲裏作)が行なわれている。また、春から秋にかけては転作などもあり、全国的にも水田での畑作が行なわれている。

水田を畑作に利用することは、もちろん水田が耕地面積の半分以上を占めているため、その有効利用という側面が大きいが、水稲作は畑地作物にとっても輪作の対象作物として非常に都合がいいのである。

連作障害という言葉をお聞きになったことがある人は多いと思う。一般的な用語としてはいや地(忌地)と呼ばれるので、そちらのほうがなじみがあるかもしれない。同じ田畑で同じ作物を作り続けていると生育障害などが現れ、作物の収量や品質が落ちる。これが連作障害である。

連作障害には様々な原因があり、またそれらが複合して現れるため対策は何かひとつ行なえば良いというものではない。例えば、土壌伝染性の病害、土壌養分の過不足、アレロパシー(他感作用、自分以外の植物の生育を抑制する)物質の蓄積による自分自身への障害などである。
個別には、土壌伝染性の病害については土壌消毒、土壌養分の過不足には土壌診断に基づく施肥改善及び湛水除塩、アレロパシー物質については輪作などといった対策が採られることになる。このうち、輪作については特定の土壌伝染性病原菌を増やさない、土壌養分のバランスを偏らせないなどの副次的効果もあり、連作障害回避の定番といえる。ほとんどの方は中学か高校などの世界史で三圃式農業という言葉を習ったと思うが、中世ヨーロッパで春作、秋作、休耕の3つの圃場に分け、輪作体系とすることで連作障害を防ぐというものである。輪作体系を組むことは古くから行なわれている連作障害回避の知恵なのである。

ここで、この輪作体系に水稲を組み込むことの意味について考えてみたい。まず水稲が野菜類等の輪作の対象作物として優れている点はほとんどの作物と共通する病害がないということである。極端な例で申し訳ないが、例えばトウモロコシの輪作相手として牧草のソルゴーを使うと、どちらにもアワノメイガが発生するため、ソルゴーの後にトウモロコシを作るとなると後作のトウモロコシに甚大な被害を及ぼす可能性がある。このため、近い種類の作物は輪作対象として使いづらいが、水稲には対象となる作物に関わらずほぼそういうことが起こらないのである。また、栽培期間のほとんどを湛水状態で過ごすためもあって、(老朽化水田による秋落ち現象など一部例外もあるが)水稲自身の連作障害もほとんどない。このため、水稲後には安心してほとんどの畑作物を植えつけることが出来る。

また、水稲が夏季に湛水状態であるということは、水による空気の遮断と適度な温度による微生物の活発な有機物分解で土壌中が還元状態(極端な酸素不足)になり、普段好気性環境で活動している土壌病原菌が生き残りにくくなる。つまり土壌消毒がある程度できてしまうということである。また、排水のいい水田では水の地下浸透による浸透除塩、中干しなど表層水を流すことによっての除塩などが期待できる。それと同時に有機態窒素の無機化が進み、難溶性リン酸の可給態化などのメリットもある。
もちろんそれだけのことなら、有機物を施用して代掻きし、ひと夏湛水状態にしておけば良いということになる。しかし、水田の水管理はなかなかに大変であるし、水稲の栽培期間中は他のものを作らなくても困らず、栽培の手間もかけられるのであれば収穫物を換金することが出来る水稲を作付けするほうが色々と都合が良いと思う。

しかし、病害防除の面からは必ずしもプラスの面だけではないことにも注意する必要がある。例えば、ブロッコリーなどアブラナ科野菜の難防除病害である根こぶ病などは遊走子が水によって広がることが知られ、根こぶ病多発ほ場から代掻き直後の土壌懸濁状態になった田面水を流すことは病気の拡散につながる。また、様々な作物に広く病害をもたらす軟腐病菌などのバクテリアも水によって拡がる。このような病気が多発しているほ場の場合、少なくとも田面水は出来るだけ外に逃がさない工夫が必要になるので、大変である。

このように一部デメリットもあるが水稲と畑作物を交互に作付けする田畑輪換はさまざまな面でメリットが多い。もちろん毎作ごとに田畑輪換をする必要もなく、2~5年程度の輪換でも良い。このあたりをしっかり理解したうえで水田での畑作物に取り組んでいただければ幸いである。

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