Chhomの学長は遺伝子のことを何もご存じない?
CHhom(カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー)のサイトに次のような記事が掲載された。「7/28(土)【洞爺から全国中継】自家採種のタネが最も大事な多くの理由」
-引用開始-
生命は最初に雄が退化する。
Yの遺伝子を守る力はXの遺伝子にある。Xの遺伝子が一つの雄は、
それを破壊されると修復できない。雌はXの遺伝子が二つあるので、
一つ壊れても大丈夫。
五十年前に比べて、男性の精子数が三分の一になっている。
-引用終了-
こんな話はまったく聞いたことがない。もちろん、人間の遺伝子についてはまったくの専門外なので明確に否定できる根拠は持たないが、あまりにも荒唐無稽なので、自分の知識で指摘できる点は指摘しておく。
まず、Xの遺伝子って何だろう?染色体のことだと思うが。Xの染色体に含まれる遺伝子ってことか?Xは二つあるから大丈夫って壊れた遺伝子をもう1つのXが修復するのか?もしかして、細胞分裂における複製のことを言っているのか?まったく意味がわからない。男性の精子数が50年前の1/3って根拠となる論文はどれなのか?専門外だからというのもあるが、見たことがない。せめて、概要でもいいから分かるところのリンクだけでも張って欲しい。調べようがない・・・ことはないが非常にめんどくさい。
-引用開始-
それはF1種のせいか?ミツバチも雄しべのないF1種の花粉や蜜のせいで
生殖できなくなったのではないか。この状況を危惧しなければならない。
私は雄しべのない花の写真を見たことがある。
だが、アクティブプラント(AP)を使う豊受自然農園の花には雄しべがある。
APで先祖返りしたのだろう。その蜜をアブや蝶がおいしそうに吸っている。
-引用終了-
ええとですね、蜜はいいとして、おしべのないF1種の花粉っておしべがないのにどうやって花粉を作るんでしょうか?自分が言っている言葉の意味分かってます?おしべのない花の写真ってそれがどうしたというのでしょうか。普通の交配育種でもおしべは取り除きますがね。ああ、雌雄異花や雌雄異株の植物の場合、雌花や雌株にはおしべはありませんけど、ご存じない?ううむ、なんかいつもと口調(?)が変わってしまうくらい脱力しちゃうやないですか。もしかして、F1の交配親って遺伝子組み換えとかで作ると思ってます?いや、そういう例もあるでしょうが、だいたいは交配、選抜など普通の育種で作ってるんやないでしょうか。で、アクティブプラントを使うとおしべができるって、普通にその辺にあるF1種の野菜類にも普通におしべはできてますが?おしべがなかったら実をつける野菜(果菜類)は作れないんですけど。あ、もしかして単為結果するF1があるのかなぁ。いやぁ、知らなかったな。
-引用開始-
無農薬野菜をつくるだけでなく、種をとる畑をつくる。
豊受の事業に人類の存続がかかっているという気持ちでやっている。
スーパーや大型レストランなどは、みんなF1種。
どれも同じ形で同じ大きさなのは、F1種だからできること、野菜のクローンだから。
自家採種からできた野菜は、一つひとつの個性がにじみ出ている。
-引用終了-
あ、そうか。F1って言葉の意味をご存じないからこういう論調になるのかな。説明して差し上げますね、読んでないと思うけど。F1とは雑種第一代(ざっしゅだいいちだい)のことね。first filial generationを略してF1です。ちょっと分かりにくいけど。形質の優れた遺伝子を持つ両親を固定種でまず育種するのね。ここに至るにはかなりたくさんの掛けあわせを試しているわけ。どの固定種とどの固定種を掛け合わせると均一で優れた性質が現れるのか、をね。これで両親が決まったらいよいよ交配して採種になる。つまり、遺伝子の均一性は高いけど、クローンではないんですね。かなり良く似ている兄弟と言ったらいいかな。一卵性双生児ではないけど、よく似た兄弟。
で、スーパーや大型レストランはみんなF1かというと、そんなことはないと思う。比率は高いだろうけど。で、どれも同じ形で同じ大きさってそれはスーパーがそういう仕入れをしているから。それに合わせてJAや市場が規格を決めているから。クローンだからなんかじゃ決してない。その影で、F1といえども農家の出荷調整で、JAの検査で形や大きさがあわずに落とされ、加工用にまわされたり、自家消費に回されたり(農家は自家消費用に無農薬とかの野菜は作ったりしませんよ。めんどくさいし)するのがたくさん出てくる。スーパーは売りやすいように野菜なんかの規格を均一にするんですね。スーパーがそういう規格外のものも売ってくれたら個性あふれる野菜がスーパーの店頭に並びますよ。たとえそれがF1でも。
こんないい加減なことを言ってる、あるいは遺伝・育種というものが分かってない豊受なんかに人類の存続なんてかけれるわけはないじゃないか。
| 固定リンク
「農業」カテゴリの記事
- 最近流行りの「スマート農業」って何でしょう?(2019.03.27)
- 植物のワクチン接種による免疫獲得とは?(2019.02.06)
- Twitterで話題になった農薬を洗い落とせる水について(2018.11.12)
- 厄介な植物のウイルス病 ~アザミウマが媒介するトスポウイルスとは~(2018.04.14)
- ニンニク(暖地系)分球の条件とは ~スポンジ球って何だ~(2018.03.30)
「食の安全・安心」カテゴリの記事
- 最近流行りの「スマート農業」って何でしょう?(2019.03.27)
- Twitterで話題になった農薬を洗い落とせる水について(2018.11.12)
- IPM(総合的病害虫管理)ってなんだろう(2016.03.20)
- 畝山智香子 著 「健康食品」のことがよくわかる本」(2016.01.17)
- 「醤油本」(2015.05.16)
「サイエンス」カテゴリの記事
- 植物のワクチン接種による免疫獲得とは?(2019.02.06)
- Twitterで話題になった農薬を洗い落とせる水について(2018.11.12)
- 厄介な植物のウイルス病 ~アザミウマが媒介するトスポウイルスとは~(2018.04.14)
- ニンニク(暖地系)分球の条件とは ~スポンジ球って何だ~(2018.03.30)
- 窒素固定菌(根粒菌)とはなにか(2016.10.24)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
「どれも同じ形で同じ大きさなのは、F1種だからできること」
これが品種で解決できるのであれば,商品化率100%も夢ではありませんね。
CHhomには,ぜひこのような技術を確立していただきたい。
投稿: itoh(元tahata) | 2012年6月27日 (水) 22時51分
>itohさん
コメントありがとうございます。
ホントに、こういうのが育種技術で解決できるのなら、食糧自給率も一気に向上しますし、期待大ですね(笑)。
栄養繁殖性植物は全部クローンのはずですが、どれも個性的ですよねぇ・・・。
投稿: がん | 2012年6月28日 (木) 19時22分