最近流行りの「スマート農業」って何でしょう?

最近、スマート農業という言葉をよく耳にするようになりました。これは、我々のような農業関係者以外ではそうでもないかもしれませんが、これから先、特に日本のような特殊な環境で農業を持続的なものとしていくために、また世界的に見ればまだまだ増加している人口をこれから先も支え続けていくために必須になってくるかもしれませんので、一般の方にも知っていただきたいと思ったのです。   さて、この「スマート農業」という言葉を積極的に推進しているのは農林水産省ですので、そのスマート農業のサイトを見てみることにしましょう。しかし、PDFばっかりで見づらいことこの上ありません(個人的感想です)。なので、定義を簡単に理解するためにも消費者相談(FAQ)のページも見てみましょう。   さて、そこでの定義をここにも引用するとします。農林水産省の「『スマート農業の実現に向けた研究会』検討結果の中間取りまとめ」(平成 26 年3月公表)によれば、「ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業」ということになります。具体的には次の通りになります。   1 超省力・大規模生産を実現  トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破 →トラクター作業を自動化することによって、作業時間自体の短縮だけでなく、空いた時間を利用してその他の作業の効率化を図るということも考えられます。戦後、農業機械の登場などによって生産者の肉体的負担も減り、作業時間等も大幅に短縮されましたが、実現の可能性はともかく、それ以来のおおきな変革を求めていると言えます。   2 作物の能力を最大限に発揮  センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培(精密農業)により、従来にない多収・高品質生産を実現  →従来は生産者の「勘」に頼っていた部分をデータ化し、ICTなどを活用したセンサー、カメラ画像のAIによる診断などを通して収穫時期や病害虫の発生予測を行うものです。収穫適期や防除のタイミングを逃すことなく、また特に加工用などで業者との取引がある場合、正確な収穫予測でそれらの契約を有利に進めることができるようにしたい、というものです。   3 きつい作業、危険な作業から解放  収穫物の積み下ろし等重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔等の除草作業を自動化  →地面に置いた重量野菜などのコンテナをアシストスーツなどで身体への負担を少なく持ち上げ、持ち運びができるようになります。コンピューター制御によるモーター駆動の高度なものから、ばねの力でひじなどを支え、長時間作業姿勢を保つ場合に、負担を軽減する簡易なものまで研究されています。   4 誰もが取り組みやすい農業を実現  農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、経験の少ない労働力でも対処可能な環境を実現  →果樹や果菜類などの整枝、剪定作業など残す枝、切る枝の選定などは経験を積まないと難しいものですが、高度にデータ化しマニュアル化することで、初心者でも成果を上げやすくするものです。   5 消費者・実需者に安心と信頼を提供  生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結 →2のところでも触れましたが、生産、収穫予測や栽培の様子などをクラウドシステムによって消費者・実需者でもアクセスできるようにすることで、相互の信頼感を醸成します。   「スマート農業」というとすぐICTに結び付けがちです。もちろんICTがその大きな根幹をなすことは間違いありません。しかし、問題点を整理し、従来技術の枠組みの中で細かい工夫などを積み重ねて効率化を図っていく(この辺りGAPにもつながる部分かと思います)のも「スマート農業」だと思っています。   以上、「理想的な話」ばかり紹介しました。それほど簡単に話が進むとは思えませんが、農業が職業として魅力を失っている(ように多くの人には見える)現状では、農業の世界もその姿を変えていく必要はあると思います。もちろんすべての農業者がこっちの方向を向く必要はないと思いますし、現行?農業にもまだまだ魅力を生み出す余地はあると思っています。...

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植物のワクチン接種による免疫獲得とは?

植物のワクチン接種による免疫獲得について、ツイッターで自分の記憶で語ったことにちょっとした(ちょっとではないかも)誤謬があり、相互フォローのBernardo Domorno(@Dominique_Domon)さんに間違いをご指摘いただいたのでいろいろ調べてみました。そこで、それらをできるだけわかりやすく解説してみたいと思います。ただ、分子生物学については、それを利用することもある立場にありながら、専門的には勉強していなかったため、簡略化した説明に間違いがないか自信がありません。そのあたり、専門家からのツッコミがあると嬉しいです。 昨年末、ツイッターで流れてきた「赤ちゃんレベルの「ゲノム編集」の入門の話」というみねそうさんのnoteを読んで、以前何かのセミナーで聞いた植物のワクチンによる免疫の獲得とメカニズムが似ているのではないかと思い、そのようなことをツイッターでつぶやいたところ、冒頭でも話したように相互フォローのBernardo Domornoさんから「植物のは弱毒ウイルスなので、違うと思う」旨のツッコミをいただきました。そこで、自分の記憶に間違いがあった可能性もあるし、間違ってはいなくても全然違うものである可能性もあるので、この際自分の知識をアップデートするためにもそれらを調べてみることにしました。 そこで、それらについて何かネット上に良い資料がないかと調べていたところ、たまたま自分が受講したセミナーのスライドが流れているのを発見しました。 弱毒ウイルスによる防除技術利用及び種苗技術との連携における課題(pdf) 宇都宮大学農学部生物資源科学科 夏秋知英 その時にこの演目で聞いた話を「植物が自分のRNAを分解して再利用する機能を活用して、ウイルスのRNAを分解してウイルス病から防御するが、一度感染したウイルスに対しては効率よく分解できるようになるため、感染しにくくなる」と理解していたわけです。 で、このスライドを読み返してみて、自分の理解が間違っていないかどうかを確認してみると、「最初から最後まで間違っているわけではないが、説明全体としては正しいとは言えない」という感じでした(苦笑) さて、そのあたりの防御機構を簡単に解説できればと思っていましたが、冒頭でも言った通り分子生物学は苦手分野で、主要な用語がなかなか理解できません。余裕があればそのうち適切な教科書を入手して勉強したいと思いますが、とりあえず今回の記事ではインターネットの力を借りようかと思います。 ということで、植物ウイルスワクチンに重要な役割を果たすサイレンシングの補足説明については以下のサイトを参考にしました。 東京大学 大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 植物病理学研究室 植物ウイルスの検出・同定と分類体系の確立 さて、それでは先ほどの夏秋先生のスライドの内容を中心に解説を試みたいと思います。まず、植物ウイルスワクチンの効果というのは、はっきりわかっているものは大きく分ければ2通りあるようです。 まず一つはウイルスには外被タンパク質というものがあり、そこからの脱外被を阻害して遺伝子の翻訳に進めなくするというものがあります。病原性の弱い弱毒ウイルスを接種することでこれを起こりやすくしておき、問題になる強毒のウイルスに感染した時にその増殖を抑制するというものです。これは自分には比較的理解しやすいものでしたし、早くから仮説として唱えられてきたようですが、外被が欠損したウイルスやそもそも外被を持たないウイロイドでもそれらの弱毒株などとの緩衝効果が見られることから、それだけでは説明がつきません。 というわけで、上記以外のもう一つは(といっても細かく分けると一つとは言えないかもですが) RNA介在性干渉効果というもので、ウイルスが主に遺伝子としているRNAの遺伝子型の発現を抑制するというものです。植物がもともと持っていて、遺伝子型の発現などにも関わるRNAサイレンシングという機構を利用しています。真核生物には広く細胞内に保存されているsmallRNAを使って、相同する配列を持つmRNAに結合させて、タンパク質合成を阻害したりすることで病害性ウイルスの遺伝子発現を抑制します。弱毒ウイルスの接種によってウイルスの遺伝子型を認識し、このsmallRNAが多数生み出されて同様の遺伝子型を持つ強毒ウイルスが感染したとしても、その増殖を抑制するわけです。 ここのところ、スライドには書いていない部分で中途半端に話を聞いていて、私は間違った理解をしていたわけですね…。 さて、では弱毒ウイルスは強毒ウイルスと同様に植物に感染して増殖しますが、なぜ病原性がないか、低いのでしょうか。実用化されている植物ウイルスワクチンのうち、CMV(キュウリモザイクウイルス)については2つのタイプがあります。 強毒ウイルスは、先ほど解説したサイレンシングに対抗するためそれを抑制するサプレッサーというタンパク質を持っています。ただ、このサプレッサーのサイレンシング抑制の作用機構はウイルスごとに異なっているらしく、詳細なメカニズムが解明されているものは少ないようです。CMVの植物ウイルスワクチンのうち一つは、強毒ウイルスが持っているこのサプレッサーが壊れているものと考えられています。このため、サイレンシングが有効に働き、ワクチン接種済の植物については後から来た強毒ウイルスに対してもサイレンシングの効果が発揮できるのでしょう。 もう一つはCMVに寄生するサテライトRNA(ウイルスに寄生するRNAがあるなんてビックリですね)によって病徴が抑制されているウイルスを利用したものです。これによって病徴を出さずにサイレンシングを誘導し、その後に強毒ウイルスが感染しても増殖しづらいとなるようです。 と、このように遺伝子発現の抑制をなぜかRNAの分解、と理解して覚えていたようです。資料にない部分を耳から聞いただけで覚えていたのでは危ういもんですね。反省して、もっと精進したいと思います…。 それから、きちんと調べたつもりですが、このエントリー中身に全く自信がありません。ほんまもんの専門家からどういうツッコミがくるか、ビクビクしています。...

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