Twitterで話題になった農薬を洗い落とせる水について

以前、Twitterで問題になっていたベジシャワーという商品について、いろいろ思うことがあったのでTwitterで連続tweetしました。で、埋もれてしまうのもアレなのでまとめてエントリーを起こしたのです。 さて、きっかけになったtweetは次のものです。 https://twitter.com/y_psychologist/status/1057801124151869440 問題点は以前に解説しているこの記事が参考になると思うのでご紹介。 http://gan-jiro.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-1b55.html 以前から繰り返し言っていますが、この商品がどういう性質のものであれ、これほど目に見える形で農薬が残留しているということは考えられません。農薬と一口に言ってもさまざまな種類があり、たった一種類の薬品?で抽出可能なわけはないのです。 自分自身は残留分析の担当をしたことはありませんが、肥料の化学分析は専門でやっていたことがあるので、成分ごとに分析できる形(多くは液体)にするための抽出や分解などの前処理については、その大変さはよく理解できているつもりです。 先ほど紹介したブログ記事にもあったように、トマトをアルカリなどで洗えば、リコピンかカロチンが溶け出してくると思われるので、おそらくその色ですよね。そうでないというなら、慣行栽培のトマトと無農薬で栽培したトマトの両方を洗ってその色を比べてみる必要があると思います。 また、トマト類は汁液が付き易い植物で、茎や葉などを触ったあと石鹸で手を洗うと黄色っぽい緑色の泡が立ちます。トマト果実の表面にはこの汁液がたくさん付着しており、水などで洗うことで、この汁液の色が目立っている可能性も十分考えられます。 なので、トマトの表面に問題があるほど農薬が残留し、あの商品によって農薬が除去できていると主張するなら、洗浄した液体を農薬分析にかけて、そのデータを公開するべきです。もちろん、一般に流通しているものをランダムに抽出してサンプルとしなければなりません。 このようなことから、あの商品説明は不誠実であると言わざるを得ないと思います。 さて、ミニトマトの農薬散布回数について、49回という数値に妥当性は本当にないのでしょうか。結論から言うと、あの言い方はかなりの誤解を誘導するものであり、わざと慣行栽培のトマトを貶める意図があると思われても仕方がないものだと言えますが、数値そのものは全く根拠がない、とまでは言えないと思います。 あの書き方だと、説明不足にもほどがあります。収穫されたミニトマト自体が結実から収穫までに49回も農薬が掛かっているかのようです。通常、開花から結実までは季節によって違うものの、最も長い時期でも45日くらいですから、それだと毎日、たまには日に二回農薬を散布しなければなりません。 元tweetを引用した方は5月植で7~9月に収穫するとおっしゃっています。それは全く正しいのですが、ミニトマトにはいろいろな作型があり、それだけではありません。Tweet主のおっしゃっているのはおそらく雨よけ夏秋栽培という作型かと思われます。 一般に流通しているミニトマトは、少なくとも西日本で多い作型は促成長期栽培と言って、8月中下旬に定植して10月ごろから収穫が始まり、6月くらいまで獲り続けるというものです。その作型になると、病害虫の発生が多い年の場合、農薬の散布回数はかなり多くなると言えます。 ここで、先に農薬の散布回数について、49回という数値の根拠について定義を考えてみます。日本には減農薬・減化学肥料栽培という用語の濫用を防ぐため、「特別栽培農産物の表示に係るガイドライン」というものがあります。 詳細な説明はここでは省きますが、農薬の使用回数を半分かどうか判断するために、それをカウントする際、実際に農薬を散布した作業回数ではなく、農薬の成分の数でカウントするというややこしいことをしています。 例えば、農薬散布の作業回数を減らすために、農家さんは殺虫剤と殺菌剤を混用するということをよくやります。この場合、殺虫剤が1、殺菌剤が1で合計2回農薬を使用したとカウントされます。 なので、先ほどのミニトマト促成長期栽培の場合、9~6月の10か月という長期間にわたる栽培になるので、月に2回農薬を散布したとして実際の作業回数は2×10で20回ということになります。 そこに、それぞれ殺虫剤と殺菌剤を混用して農薬を散布した場合、特別栽培ガイドラインの定義では20×2で40回もの農薬使用回数ということになります。そこへ、種子消毒や苗育成中の農薬を加えると49回というのはあり得ない数字ではないということになります。 特別栽培などについては、各都道府県が地域慣行栽培の農薬使用回数というのを公表している場合があります。これは、地域によって病害虫の発生状況が違うため、農薬の使用回数も違いがあり、全国で統一すると減農薬のやりやすさに地域格差ができるため、そのように設定しているものです。 そこで、先ほどの定義に戻って各都道府県が公表している農薬の使用回数を調べれば、ミニトマトの促成長期栽培の慣行において、49回としているところが出てくる可能性は十分にあるわけです。この数字はもし根拠があるとすればそこを参照した可能性が高いのではないかと思っています。 ※注 とあるフォロワーさんが教えてくださいましたが、どうやら群馬県の特別栽培認証基準で、ミニトマトの慣行栽培において農薬の使用回数が49回となっているようです。 http://www.pref.gunma.jp/06/f0910002.html とはいえ、先ほども述べたようにトマトの果実だけに絞って考えれば開花から収穫までの農薬散布回数は2~4回程度、成分の数を考慮してもその2倍程度までと言えるでしょう。しかも、ふつうは同じ農薬を続けて使うことはありません。使用回数の制限や抵抗性の回避を考慮するからです。 また、農薬の使用に関しては、人間の健康に影響がないよう、個別にその濃度や使用回数に関して厳しく制限されています。どの農薬も、普通に使われている限り収穫時に基準値を超えるような残留は起こりません。 これらのことから、かりに49回使用されていようとよほどのことがなければ、普通に流通しているミニトマトで水で洗ったくらいで目に見えるほどの農薬が抽出されるなどありえないのです。その数字のインパクトだけを強調して、農薬のものかどうかわからない「色」で脅すのはやり方が間違ってます。

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厄介な植物のウイルス病 ~アザミウマが媒介するトスポウイルスとは~

植物病害のうち、糸状菌や細菌の場合、胞子の飛散や土壌、水媒伝染などにより病気が拡散しますが、ウイルスは基本的には生体内でしか増殖、生存できませんのでそういった伝染形式はほとんどありません。直接の接触や剪定鋏での作業などによる汁液感染、害虫のアブラムシやアザミウマ、コナジラミなどを通じた虫媒伝染、挿木や接ぎ木、花粉や種子などの生体内に残存しての世代間伝染などになります。 そこで、対策ですが同じほ場内部での汁液感染については、作業する上において発病株の早期発見と剪定用の鋏などを随時消毒や交換しながら使うなどの工夫をすることがポイントになります。世代間伝染ではいわゆるウイルスフリー株を使う、またはそれらを使って生産された無病の挿し穂や苗を使うことが対策となるでしょう。 厄介なのが虫媒伝染です。最近メロンやキュウリで猛威を振るっているメロン黄化えそウイルス(MYSV)はミナミキイロアザミウマが、トマトに甚大な被害をもたらすトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)はタバココナジラミ(シルバーリーフコナジラミ含む)が媒介します。 TYLCVについては、最近になって耐病性品種が多数開発され、比較的容易に、また品質も従来品種と変わらず生産できるようになってきています。もちろん耐病性品種といっても、まったく発病しないわけではないので、従来通りの防除は必要です。 露地栽培では侵入防止対策が極めて難しく、施設栽培でもネットの展張などの侵入防止対策をしても、100%の侵入防止はほぼ不可能であると言えます。アザミウマなどの微小害虫が通過不可能なネットだと換気効率が極端に落ちるため現実的ではありませんし、たとえそういうネットなどを使用したとしても作業者の出入りなどの際に侵入があったり、気を付けているつもりでもビニールハウスなどではどこかに隙間はできるものです。 ですが、完ぺきではなくても例えば0.6mm目合いのネットではアザミウマなら侵入率を30%程度までには下げられますし、光線を拡散する資材(白いタイベックシートなど)をほ場周辺に使うことでアザミウマやアブラムシなどの視覚をかく乱して飛翔を妨害し、侵入しにくくすることはできます。 また、それでも不幸にして黄化えそ病などの致命的なウイルス病が発生してしまった場合、発病株の抜き取りと適切な処分(ビニール袋に入れて廃棄、土中への埋設、焼却など)を行い、同時に保毒虫の撲滅を目的とした薬剤による防除が必要になります。 さて、虫媒(主にアザミウマ)伝染によるウイルス病の防除対策についてお話しして来ましたが、メロン黄化えそウイルスなどトスポウイルスの場合、アザミウマが一度ウイルスを含む汁液を吸っただけで生涯にわたって感染能力を持ち続けるのですが、それはなぜでしょうか? 実は、トスポウイルスは、種としては動物ウイルスBunyaviridac科の仲間に含まれ、その中でもMYSVなどはアザミウマの体内で増殖が可能なのです。主に1例幼虫の時に保毒植物から吸汁してウイルスを獲得し、その後アザミウマの体内を移動し、唾液腺に到達してそこで増殖しながら植物への感染機会を待つ、という戦略をとるわけです。また、それらのウイルスはアザミウマの行動も制御し、感染植物には雌成虫が集まりやすく、強い産卵選好性もあるという報告もあります。元になる文献が確認できていませんが、トスポウイルスは元々アザミウマなどに感染するウイルスが変異したものではないかという説もあるようです。 それにしても、元々アザミウマのウイルスだったのならアザミウマとの共同で植物を冒すのではなく、アザミウマの方を脅かしてほしいものですね。 参考サイト: 『むしコラ』 虫媒性ウイルスの巧妙な手口 アザ ミウマ類 が媒 介 するウイル ス(TSWV) (pdf)

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